放射性物質の汚染拡大
放射性物質は福島第1原発近くの海水からも検出され、汚染拡大が懸念されている。政府は農産物に対する監視などを強化した。汚染の現状や調査方法などをまとめた。
▽放射性物質
Q 放射性物質はどういうもの。
A 放射線を出す物質。検出されたヨウ素131とセシウム137は自然界にはなく原発事故との関連が考えられる。放射性物質が壊れ、半分に減る時間を半減期といい、ヨウ素131は約8日間だが、セシウム137では約30年間もある。半減期が長いほど、放射性物質がなくなりにくい。
Q 「ベクレル」と「シーベルト」という単位が使われているが。
A ベクレルは、放射線を出す能力である放射能の強さや量を表す単位だ。一方、シーベルトは放射線の人体への影響を示すのに使われる。例えば、同じ量でも放射線の種類や、距離によって影響は異なる。電球でいえば、ベクレルは光の強さそのものを示すもので、シーベルトは距離によって変わる明るさを測るものといえる。
Q 「外部被ばく」と「内部被ばく」という言葉も聞くが。
A 体の外から放射線を浴びた場合が「外部被ばく」、放射性物質を取り込んでしまった場合が「内部被ばく」。「外部被ばく」はコンクリート構造の建物に入るなど周囲との「壁」をつくれば影響を少なくできる。「内部被ばく」は、雨やちりなど落下物を吸い込んだり、放射性物質を含んだ水や食べ物を取ることが原因となる。
Q 原発周辺の海水汚染も心配だ。
A 「沸騰水型」の福島第1原発では、燃料に直接触れる水と、その水を冷やすための海水が使われている。直接触れる水は内部を循環して再利用され外には出ない。海水は燃料と直接接しておらず海に捨てられている。今回、周辺の海で放射性物質が検出されたため、事故による施設の崩壊や放水の影響が懸念されている。
▽農産物
Q 暫定基準値とは。
A 放射性物質が付着した食品が安全かどうかを見極めるためとして、国際放射線防護委員会(ICRP)が各国に勧告した数値を参考に厳しく設定した。厚生労働省が急いで決め17日に地方自治体に通知。このため「暫定」となっている。
Q 基準値を超えた食品を口にすると、どうなるのか。
A 直ちに健康被害が出ることはない。政府は「基準値を超える食品を数日間食べたとしても、今だけでなく将来にわたっても健康に影響はない。1年間食べ続けた場合に、初めて健康に影響が出る可能性が出てくる」などと説明している。
Q なぜ出荷停止にしたのか。
A 基準値を超えた食品を長期間食べ続けることは良くない。また基準値を超えた食品を出荷段階で封じ込めて市場に出さなければ、安全な商品だけが流通することになり消費者も安心できる。
Q 放射性物質の濃度は地域ごとにばらつきがあるが県単位の出荷停止になった。
A 野菜など生鮮食料品には原産地表示が義務付けられているが都道府県名を記せばよいことになっている。汚染食品の流通を完全に阻止するために県単位の出荷停止が必要になった。
Q 調査方法は。
A 厚労、農林水産両省の協力や助言を得て、都道府県が実施。採取した野菜を水洗いし土を落としてから検査する。土に含まれる放射性物質まで検出しないようにするためだ。通常、採取から1~2日で結果が出る。
Q 基準値を上回った野菜でホウレンソウが多いのはなぜ。
A ホウレンソウは地面に大きく葉を広げ、放射性物質が付着しやすい。農水省がホウレンソウなどの葉物野菜を優先的に調べるよう都道府県に求めていることも背景にあるようだ。
Q ホウレンソウの品薄も心配だ。
A 昨年3月下旬に東京都中央卸売市場に入荷したホウレンソウのうち、約6割が出荷停止の対象になった福島など4県産だったため農水省は「安定供給に大きな懸念がある」とみている。同省は、四国や九州などの産地に首都圏への出荷量を増やすよう依頼しているが値上がりする可能性もある。
Q 畑や海産物はどうなのか。
A 農水省は、環境省などと連携し、畑や水田などの土壌が汚染されていないかどうか調査する方針。 現在、茨城県以北の太平洋での漁業は中断しているが、再開を待って都道府県が海産物の調査に乗り出す見通し。ただ当面は農産物の検査を優先する考えだ。
▽水道水
Q 原発周辺の水道水から放射性物質が検出された。
A 福島県飯館村で、20日に水道水1キログラム当たり965ベクレルの放射性ヨウ素を検出。国が定める摂取制限値300ベクレルの3倍以上だ。放射性セシウムの制限値は200ベクレルで、今のところ超えた地域はない。
Q 飲んでいいのか。
A 厚労省は制限を超えた水道水は大人も子どもも、飲まないよう注意を呼び掛けている。一方で、直ちに健康に影響は出ないとして「代わりがなければ飲んでも差し支えない」としている。手洗いやお風呂などには使えるとも説明している。
Q 赤ちゃんは大丈夫か。
A 粉ミルクを溶かして飲ませる乳児については基準を厳しくし、放射性ヨウ素が100ベクレルを超えた場合は飲ませないよう求めている。発達段階にある乳児は甲状腺にヨウ素を取り込みやすいためだ。
Q 自分が飲む水も心配だ。
A 国が各地の分析結果をまとめ、問題があった場合は自治体を通じて伝えるようにしている。福島県以外に、100ベクレル以上のヨウ素が検出された地域は今のところない。
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